研究計画書に則り、平成21年度は、半導体レーザ(LD)励起マイクロチップ固体レーザの発振パターン制御と光渦生成技術及び自己混合レーザ計測技術の高度化を中心に研究を遂行し、以下の成果が得られた。 横モード制御 (1)平均グレイン・サイズが1μm程度の微粒Nd:YAGマイクロ共振器セラミックレーザを直線偏光LDにより軸ずれ/斜角励起することにより、実効利得の偏光依存性、及びセラミック媒質の熱レンズ効果を介した発振ビームの曲がりにより、ベッセル・ガウス並びにマシュー・ガウスビームでの自己発振を見出した。微粒子を長い距離に亘ってトラップできる非回折ビームの生成として意義が大きい(成果リスト中のLaser Physics Letters論文). (2)LD軸ずれ励起法によるインス・ガウスモードの選択発振を実現し、自作の回転制御型非点収差モード変換器により、多様な形状(正方形、長方形、楕円)と空間的に分離した位相特異点(線状・格子状配列)を有する新規光渦ビームの生成に成功した.微粒子運動制御の自由度を拡大した点に意義がある(CLEO-Pacific Rim論文). (3)蛍光異方性ない方向に切り出したc-cutのNd:GdVO_4結晶を用い、LDにより軸ずれ/斜角励起することにより、直交偏光したインス・ガウスモードペア間の横モード同期現象を介した「空間-偏光もつれ発振」を見出し、理論的に再現した.ベクトル特異点を有するコヒーレント状態と考えられる(Optics Express論文). 自己混合レーザ計測 (1)自己混合レーザのキラー・アプリケーションとして、多数のブラウン粒子の運動を一個の仮想粒子の運動に集約して計測する手法を開発し、仮想粒子と実粒子充填液の間に成立するスケール則を見出した.また、仮想粒子の平均自乗変位より、正確に実粒子の拡散係数が求めうることを検証した(Applied Physics Letters論文). (2)鞭毛により自発運動するプランクトンの運動を補足し、平均速度や個体サイズを非修飾で定量的に計測することに世界で初めて成功した(Applied Optics論文). (3)蛍光寿命が長いYb:YAGレーザを用いた実験により、予測通り、Nd系レーザに比べて光感度が100倍向上することが検証された.-120dBの光強度帰還率の下で、現実に不可避な環境振動に埋もれた10nm振幅のピエゾ振動の検出に成功した(Japanese Journal of Applied Physics論文).
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