電気光学結晶(BSO)を誘電体としたマイクロギャップのバリアー放電装置を作成し、真空チェンバーに設置後Ne-Xe(10%)混合ガスを封入し、バリアー放電を行い、壁電荷の時間変化をレーザーによる偏光分光法(筆者らによって開発)によって観測した。その後、パルスYAGレーザー(パルス幅10ns、波長533nm)を外部照射し、壁電位が光照射と同期して変調できることを確認した。そして、光照射壁電位変化量がYAGレーザー強度が0.5_μJまでは強度に直線的に比例し、壁電位変化量の寿命がおよそ20msであることを確認した。また、YAGレーザー照射による壁電位変化がバリアー放電を誘起することを示すために、過渡的放電電流を測定した。その結果、放電維持電圧近傍では、YAGレーザー非照射では放電開始が統計的にばらつくが、レーザー照射時には照射直後に放電開始が集中することがわかった。さらに、高感度CCDカメラを用いて過渡的プラズマ発光を観測した。この場合も非照射時には統計的にばらつく放電が、照射時には照射直後に集中した。結果として放電維持電圧近傍では外部パルスレーザー照射によってバリアー放電が誘起され、放電制御できることを確認した。さらに誘電体として電気光学結晶BSOを用いない場合は、外部光照射による放電誘起は確認できなかった。以上のような実験結果を詳しく解析し、この現象が次のような過程から発生していると判断した。(1)外部照射光による電気光学結晶の非線形電気感受率の変化、(2)電気感受率変化に伴う誘電率の変化が壁電位変化をもたらす、(3)壁電位変化による誘電体表面上のバリアー電極間電圧の増加、(4)印加電圧一定でも実質の電極間電圧の増加により絶縁破壊が容易に発生し、バリアー放電が誘起される。今年度の研究から外部照射パルスレーザーによるバリアー放電の誘起・制御が技術的に可能であることがわかった。
|