本課題においては、前立腺がんの放射線治療に用いられる、よう素125密封小線源について、線量測定の精度向上を目指して、線量の方向依存性の精密測定を実現するための研究を進めている。本年度は、線源の個体差を含めた線量測定精度の向上と、その評価を行った。昨年度までの装置では線源を垂直に立てた状態から、徐々に線源を倒して方向依存性を評価していたが、今年度は線源を水平面内に倒したまま回転させて、方向依存性を評価できるよう改造した。これにより、線源が上下反対になることによる線量分布の変化を抑制した。昨年度までは、線源長軸回りの分布は手動で線源を回転させて評価していたが、いずれの評価角度においても線源長軸回りに線源が常時回転できるように工夫した回転駆動系を組み入れた。これにより、線源装着による再現性のばらつきを改善し、また本課題の特徴である線源の長軸周りの線量の方向分布を平均化することが可能となった。さらに、線源と治具を区画することにより、空気中における散乱光子による測定への影響を抑えた。この散乱項を含め10項目程度に細分化した補正項の評価を進めるとともに、測定不確かさ要因を15項目程度まで抽出しその影響を評価した。そして、主な不確かさ要因が、微小電流測定、アパチャー径サイズ、並びに線源設置距離及び光子エネルギースペクトル評価に基づくアルミフィルター内での減弱補正の不確かさであることを確認した。これらの結果に基づき測定精度の向上を目指し、微小電流測定環境の改善、アパチャー径の精密測定、線源位置設定の精度向上、アルミフィルターの高純度化およびエネルギースペクトルの再評価を進めた結果、線量絶対測定による線量の方向依存性の測定不確かさの見積もり値が、世界のトップレベルである、2%程度まで小さくなった。
|