固体高分子の中にカーボン・ナノチューブを分散させた複合材料は、元の高分子材料と比較すると弾性的な強度が増すことが知られている。この複合材料における熱伝導率の振る舞いは、工学的に重要な問題である。単体のカーボン・ナノチューブは、極めて高い熱伝導率を示す一次元熱伝導体である事が従来の研究から知られているが、高分子複合材料における熱的な性質については未解決の問題が数多い。 平成21年度においては、「高分子複合材料における熱伝導解析」という本研究課題の目的に関連して、非平衡分子動力学シミュレーションの計算手法に関する理論的研究を行った。具体的には、高分子材料の非平衡シミュレーションに適した計算手法の拡張を行い、その有効性及び計算精度について定量的に明らかにした。また、上記の複合材料に関する研究課題を遂行する上では、膨大な個数の原子系を扱う事が必要である為、分子シミュレーションの高速化に関する研究を行った。
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