研究課題
固体高分子の中にカーボン・ナノチューブを分散させた複合材料は、母体となる高分子材料と比較すると弾性的な強度が増す事が知られている。この複合材料における熱伝導率の振る舞いは、工学的に重要な問題である。単体のカーボン・ナノチューブは、極めて高い熱伝導率を示す一次元熱伝導体である事が従来の研究から知られているが、高分子複合材料における熱的な性質については未解決の問題が数多い。平成23年度においては、本研究課題で扱っている系における熱伝導率に関して、数値シミュレーションの立場から考察した。また、熱伝導率の振る舞いを物理的に解析する為に、系の振動モードと熱伝導特性との間の関係に関する研究を行った。本研究課題で扱っている様な高分子系(及び高分子複合材料)における振動ダイナミクスは、調和近似に基づく記述では妥当ではなく、非調和項の効果(非線形性)が強く影響している。この問題に関連して、非線形性を有する物理系におけるモード解析に適した新たな数値計算手法を用いて、振動励起モードの物理的性質、及びその振動数依存性について定量的に明らかにした。過去の研究において、炭化水素系における分子シミュレーションを行う際に用いられる力場は、数多く提案されている。一般に、分子シミュレーションを用いた研究においては、粗視化シミュレーションと全原子シミュレーションという、2通りの異なるアプローチが用いられている。一般に大規模な系を扱う上では前者の方が有利であるが、計算機シミュレーションにおいて材料の性質をどの程度正確に再現できるかという点に関しては未解決の点も数多い。本研究では上記の観点から、系を記述する力場に関しても考察を行った。
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Molecular Simulation
巻: (in press)
Physical Review E
巻: 83 ページ: 056611-1-056611-6
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/39435
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 50 ページ: 102204-1-102204-5
10.1143/JJAP.50.102204