凝縮媒質(すなわち、濃縮気体を含む液体や固体)の中を伝播する衝撃波に関する数理工学的研究(理論と数値解析を有機的に結合した工学的研究)を行った。具体的には以下の項目(1)-(3)を研究した。 (1)衝撃波を特徴づけるランキン-ユゴニオの関係と衝撃波面構造を定量的に解析し、その力学的および熱的特性を解明した。すなわち、(A)剛体球系での衝撃波現象、特にランキン-ユゴニオの関係と衝撃波の安定性の研究を行った。その結果、広い衝撃波強度(あるいは広いマッハ数)領域および広い剛体球系濃度領域において、衝撃波の安定性を明確にすることができた。さらに、衝撃波で生起する、粘性および熱伝導などの不可逆過程の研究を行った。ここでは、まず、各種物理量が時間的空間的に急激に変化する場合の非平衡熱力学理論の検討から研究を始めた。その結果、「拡張された熱力学」に基づく衝撃波面の解析を遂行することとなり、従来の理論では得られなかった新しく興味ある知見を得ることができた。(B)実在液体系での衝撃波現象の解析を行った。剛体球系での結果を基準としていわゆる摂動理論により実在液体および固体のモデル化を行った。このモデルを用いることにより、分子間相互作用が衝撃波現象にどのように影響を及ぼしているかということを解析し、いくつかの興味ある結果を得た。 (2)衝撃波によって誘起される相転移現象の熱・統計力学的解析を行った。まず、衝撃波面の前後で相が異なる場合のランキン-ユゴニオ関係式を理論的に明らかにした。さらに、その関係式を満たす衝撃波の安定性について、理論および数値的に解析し、理論あるいは応用上興味深い結果を得た。 (3)非線型波動(衝撃波と加速度波)の相互作用に関する研究を行った。理想気体中の非線型波動の相互作用については明確な結果が得られているが、実在気体中の相互作用についてはさらなる研究を必要とする。
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