本研究で取り上げる多孔性媒質内の流れ解析については、古くから多くの研究が行われてきている。H.Darcyによる研究から始まって、特に土木分野では現場における必要性から多くのモデルが提案され、実用化されてきている。それらの研究においては、運動方程式として飽和・不飽和浸透流方程式と呼ばれるものが用いられている。これは、より一般的な流れの解析で用いられるNavier-Stokes方程式を簡略化したものと考えることができ、土質中のように流速が非常に遅いところでは妥当なモデルとあると考えられている。しかしこのモデルにも、圧力分布を与える関すが実験的に与える必要があること、不飽和領域に存在する多数の微細な気液界面の影響が充分に考慮されていないこと、Navier-Stokes方程式の中で重要な役割を果たしている移流項が無視された形になっていること、などの問題点があると考えられる。これらの問題点を改善して、より現実に即した、信頼性のあるシミュレーションを行うための数理モデルを構築するのが、本申請研究の目的とするところである。 平成20年度は、以下の点について研究を行った。 (1)多孔性媒質中のメニスカスに由来する表面張力を、体積力として運動方程式にとりこむ手法の検討 (2)上記の運動方程式を効率的に解くための数値アルゴリズムを厚生し、計算コードの作成 計画では20年度に土層実験との比較までを行う予定であったが、移流項の計算精度を向上させるための手法の検討と計算コードの作成に手間取ったため、実験との比較は準備を行うにとどまった。次年度には、土層実験との比較に進む予定である。
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