平成20年度では、平滑試験片レベルの研究成果をモデル歯車へ展開するために、まず歯車に発生が予想される疲労損傷をマイクロX線応力計測も含めてミクロスコピックな機構解析を詳細に行う。得られた知見に基づいて、DLC薄膜とSRIQ圧縮残留応力の相乗効果が (1) 歯車の歯元を想定した切欠試験片を用いて疲労強度に及ぼす影響、さらに(2) 歯車の歯面を想定したローラピッチ試験片を用いてフレッチング疲労信頼性に及ぼす影響について明らかにした。すなわち、 (1) 歯車の歯元を想定した応力集中係数2.3の切欠試験片を用いて歯車歯元の疲労強度に及ぼすDLC薄膜と圧縮残留応力の影響をミクロ疲労損傷の機構解析に基づいて検討した。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてミクロフラクトグラフィによって切欠底に発生する疲労き裂を機構解析した。併せて、マイクロX線応力測定装置によって疲労損傷過程の各段階での残留応力の変化過程を追跡した。 (2) 歯車の歯面を想定したローラピッチ試験片を用いて、表面に発生したピッチングのミクロな機構解析に基づいて、フレッチング疲労寿命に及ぼすDLC薄膜の影響を検討した。 (3) その結果、複合化の効果・劣化、特に「圧縮残留応力が解放されない最適なDLC処理条件」を解明し、モデル歯車に「耐疲労性と摺動特性の最適化」を発現するDLC/SRIQ複合表面改質法を設計した。
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