研究概要 |
セラミックスにおいても超塑性現象が発見されてから,既に20年を経過しようとしているが,未だ,現象論的な記述の域を出ていないというのが現状である.この原因は,超塑性変形という力学現象が起こるための条件が,結晶粒子群という離散的な構造を考慮した運動方程式に関連付けて定式化していないことにあると考えられる.そこで,本研究では,申請者が取得した結晶粒子群の運動学的データを確率過程論に基づいて解析し,超塑性変形における結晶粒子群の動力学的理論を構築することを目的とした.本年度の検討の結果,局所的に拘束がない場合の理想的な流跡線を,有限要素法を用いて数値シミュレートした.また,この結果をドリフト成分と見なして,実験的に取得している多数の粒子の流跡線から超塑性変形の進行に伴うランダムウォーク成分を分離し,その時間発展について検討した.そして,摩擦力項を含むランジュバン方程式を結晶粒子群の運動解析のモデルとして適用できるかどうかについても,予備的に検討した.このような考察の結果,超塑性変形における粒子の運動は,ドリフト成分を考慮したランダムウォークと見なしうることがわかった.
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