研究概要 |
マグネシウムは,実用金属中で最も軽量金属であり,寸法安定性,切削性,比強度,電磁波シールド性に優れるなど多くの長所を有しているが,最大の欠点として耐食性に乏しいという問題点がある. 筆者はこれまで,無電解Niメッキ法,並びに電解Niメッキ法を用いてマグネシウム合金AZ31の腐食疲労強度改善を試みた.後者の方法を用いることによって,腐食疲労寿命の低下を防ぐことを明らかにした.本研究では,陽極酸化被膜,及び陽極酸化被膜にペイント膜の複合被膜を施した材料の腐食疲労挙動について調査した.その結果,以下の結論を得た. (1)陽極酸化被膜法のみでは,腐食疲労寿命の減少を抑えることができなかった.これは同被膜が多孔性を有するためであることを明らかにした.大気中の疲労寿命は裸材とほぼ同程度であった. (2)陽極酸化被膜には多数の微小な縦穴と横穴が発生しており,腐食疲労過程では,これらの微小孔を通じて腐食液が母材に到達し,そこに腐食ピットを形成するため,き裂の発生が加速された. (3)陽極酸化被膜にペイント膜を施した複合被膜材の腐食疲労寿命には,改善が認められた.これはペイント膜の遮断効果によって,腐食液が母材に到達し難いためである. 従って,Mg合金の耐腐食疲労性能改善に,本陽極酸化被膜とペイント膜の複合膜の有効性が確認され,実用に供することができる.
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