研究概要 |
【研究目的】多孔質構造を持つ骨基質内で生じるひずみ誘導型液体流動(strain-induced fluid flow、SIFF)は骨の細胞を刺激し適応的骨形成反応を促すと考えられている。しかし、SIFFにより骨形成反応が促進されるようすを実際に観察した例は未だない。本研究では、SIIFにより培養骨芽細胞の骨形成反応がどのように促進されるかを石灰化に至るレベルまで明らかにすることを目的とする。得られた成果は、骨の力学的適応機構の解明という基礎研究分野において有益な情報となるだけでなく、骨の再生医療分野において骨再生を促進する新たな方法としての応用も期待できる。 【成果の内容】平成21年度は、SIFFの刺激効果を高める条件として刺激周波数に着目し実験を行った(目的2)。実験では、ラット骨芽細胞を播種したI型コラーゲン・スポンジに対しSIFFを0.2Hz,2Hz,または20Hzの周波数で与え、各周波数における刺激効果の違いを刺激直後に生じる細胞内Ca^<2+>応答を観察することで調べた。なお、動的負荷を受ける三次元培養細胞の細胞内Ca^<2+>応答は顕微鏡での観察が不可能であるため、本研究室において独自に開発した光学装置を使用した。実験の結果、20Hzの刺激は0.2Hzと比べて約4倍、また、2Hzと比べて約2倍高い刺激効果があることが明らかとなった。以上の結果は骨の力学的適応機構解明のための示唆的知見として興味深いものである。また本結果は、培養再生骨の石灰化を効率的に促進する刺激条件を提供するものであり骨の再生医療分野における貢献が期待できる。来年度は、本結果を実際の石灰化レベルで検証する予定である。
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