【研究目的】多孔質構造を持つ骨基質内で生じるひずみ誘導型液体流動(strain-induced fluid flow、SIFF)は骨の細胞を刺激し適応的骨形成反応を促すと考えられている。しかし、SIFFにより骨形成反応が促進されるようすを実際に観察した例は未だない。本研究では、SIIFにより培養骨芽細胞の骨形成反応がどのように促進されるかを石灰化に至るレベルまで明らかにすることを目的とする。得られた成果は、骨の力学的適応機構の解明という基礎研究分野において有益な情報となるだけでなく、骨の再生医療分野において骨再生を促進する新たな方法としての応用も期待できる。 【成果の内容】平成22年度は、骨芽細胞に対するSIFFの骨形成反応促進効果に影響を与える条件として播種細胞密度と担体素材に着目し実験を行った(目的2)。実験では、ラット骨芽細胞を播種細胞密度1600cells/mm^3(低播種密度)または6900cells/mm^3(高播種密度)でI型コラーゲンスポンジまたはメラミンスポンジに播種し、SIFFを0.8Hzの周波数でおよそ3週間与えた。なお、担体の石灰化度モニタリングには本研究室において独自に開発した光学装置を使用した。実験の結果、低播種密度では明確な刺激効果は見られず、一方、高播種密度では刺激効果が見られた。また、メラミンスポンジよりもコラーゲンスポンジを用いた場合においてより高い刺激効果が認められた。本結果は、SIFFの刺激効果は骨芽細胞の担体内培養環境に大きく依存すること、また臨床応用的観点からは、SIFFによる培養再生骨の効果的な石灰化促進には播種細胞密度と担体素材の選定が重要であることを示している。
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