研究概要 |
今年度はガラス材料の熱粘弾性特性を評価するとともに,得られた熱粘弾性特性を用いて有限要素法シミュレーションを行い,マイクロ成形特性について定量的な評価を行った.熱粘弾性特性は一軸圧縮クリープ試験により評価し,得られた結果に対して畳込積分の定義に基づくLaplace変換・逆変換を適用することによって緩和弾性係数のマスターカーブを作成した.また緩和弾性係数の温度依存性については,粘性流動の活性化エネルギーを用いてアレニウスの式によりシフトファクターとして近似を行った.得られた粘弾性特性のマスターカーブは,一般化Maxwellモデルにより近似し,未知パラメータの同定を行った. ガラス試料としてパイレックスおよびD263を用い,エンジニアリングシステム社製のホットエンボスガラス成形装置によりガラスのマイクロプレス成形試験を実施した.金型にはライン・スペースの溝形状を付与したグラッシーカーボン金型を用い,ガラス転移温度近傍にて成形を実施した.また,実験と同様の条件において,有限要素法ANSYSを用いた成形シミュレーションを実施した. 最終的に成形試験により得られた結果と成形シミュレーションにより得られた結果の比較を行い,成形シミュレーション手法ならびにクリープ試験で同定された熱粘弾性特性の妥当性について検証した.矩形の成形形状は成形温度の上昇とともに増加する傾向を示し,これは解析と実験結果においてほぼ一致することを確かめた.パイレックスについては結果にやや差が生じたが,これは成形環境における温度の不均一性に起因するものと考えられ,次年度以降に改善する予定である.
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