研究概要 |
申請者らのグループでは,これまでにガラスレンズのプレス成形に関する数値シミュレーションを行い,成形残留応力・残留変形量の予測を試みた.H22年度は,昨年度に評価されたガラス材料の熱粘弾性特性をもとに,ナノメートルオーダーのラインアンドスペース金型,およびマイクロレンズアレイ金型を用いたマイクロ・ナノインプリント成形試験を実施した.金型にはアモルファスカーボン金型を使用し,溝幅500nm程度のラインアンドスペース,もしくは直径7μm程度のマイクロレンズアレイ形状を集束イオンビーム加工機にて金型表面に付与した.ガラス材料には,昨年同様D263を使用し,熱粘弾性パラメータの近似には,Maxwellモデルを,シフトファクターの近似には,Narayanaswamyの式を用いた.ホットエンボス装置を用いて,ラインアンドスペース,マイクロレンズアレイを実際に成形し,得られた転写形状を有限要素解析により得られた形状と比較した結果,両者は高精度に一致し,その解析精度は2~3%と非常に高いものであることが確認された.さらに,マイクロ・ナノインプリント成形において,非常に問題視されている摩擦の問題に関して,摩擦係数を変化させ数値解析を行うことで,高温下での金型-ガラス間の摩擦係数をある程度予測することが可能となった.このように,本研究の成果を利用することにより,試行錯誤的に成形試験をすることなく,数値解析により,マイクロ・ナノインプリント成形の最適成形条件を見積もることが可能となった.さらには,単に成形温度,成形圧力等のパラメータのみから最適条件を評価するのではなく,高温下での摩擦係数,成形中および成形後の内部応力状態等も考慮した最適条件を決定することが可能となった点において,非常に有益な手法であるといえた.
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