研究概要 |
高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて,セラミック材料のアルミナおよび炭化ケイ素をターゲット材とし,種々の成膜条件の下でホウケイ酸ガラス基板上にアルミナー炭化ケイ素二層スパッタ膜を形成した.いずれの成膜条件下で作製したアルミナ-炭化ケイ素二層被膜および同被覆材は,ガラス基板単体の特性に比べて,表面粗さは粗く,また気孔率は高くなったが,硬さ特性,曲げ強度および疲労寿命は向上することが明らかになった.また表面粗さ,硬さ特性および曲げ強度についてはアルミナおよび炭化ケイ素両層の影響を受けたのに対して,気孔率は表層である炭化ケイ素層のみの影響を受けることが判明した.さらに,高周波電源出力が高くなると,気孔率は上昇し,硬さ特性および曲げ強度は高くなることも確認された.なお,各特性値の相関としては,気孔率と表面粗さの間,ならびに硬さ特性と曲げ強度の間に,それぞれ若干弱い相関が認められた.また,曲げ強度と疲労寿命のそれぞれの平均値間には明確な線形関係が現れた.このことから,長時間を要する疲労試験を行わなくても曲げ試験の結果を用いて,疲労寿命の平均的特性の推定が可能であると予想されるが,現実には疲労寿命もばらつきが大きいので,寿命分布特性も考慮した低寿命側の推定が不可欠となる. また,本年度は特にアルミナ単層被覆材の曲げ強度および疲労寿命について,その特性評価を行うとともに,その結果に基づいた保証試験を実施した.保証試験によるスクリーニングを行うことによって短寿命の試験片を除外できたことから,この手法は試験片の最低疲労寿命を保証する上で有効であることが示唆された.今後,他の成膜条件下で様々な被覆材料を作成し,この保証試験の有効性や,繰返し速度,保証応力,最低疲労寿命の間の関連性について検討する必要がある.
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