研究概要 |
微細結晶粒バルク材の作成法として,繰り返し重ね圧延法およびECAP法の検討を行った.繰り返し重ね圧延法では,表面に形成された酸化皮膜のため接合することができず,真空またはアルゴンガス申での圧延が必要であることが分かった.また,ECAP法では,1パスで結晶粒径を1μm以下にすることが可能であったが,1パスで型が破壊してしまい,型の形状を再検討することが必要であることが分かった.一方,圧延と熱処理を繰り返すことによって,板厚0.1mm,平均結晶粒径1.2μmの材料を作成することができた.その引張り試験および疲労試験を行った結果,引張り強さおよび疲労限度は結晶粒径の平方根の逆数に比例して増加し,平均結晶粒径1.2μmの材料の引張り強さおよび疲労限度は,それぞれ,平均結晶粒径が20μmの材料の2倍および3倍近くに上昇した.一方,工業矯純鉄を用いて,平均結晶粒径25μmおよび数mmの細線(直径180μm)を作成し,引張り強度および疲労強度に及ぼす結晶粒径の影響を調べた結果,結晶粒径の大きい材料の場合,引張り強さのばらつきが大きく,また,疲労強度は,いずれの結晶粒径の材料でもばらつきが大きいこと,さらに,結晶粒径が大きいほうが疲労強度が低いことが明らかになった.断面内に含まれる結晶粒数が,強度のばらつきに大きく影響しており,また,細線の疲労破壊は,巨視的な塑性変形の進行による断面積減少によるものであることが明らかになった.
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