研究概要 |
微細結晶粒バルク材の作成法として,繰り返し重ね圧延法およびECAP法の検討を行った.繰り返し重ね圧延法では,昨年度は,表面に形成された酸化皮膜のため接合することができなかったため,本年度は,表面を金ブラシで研摩することによって改善を図ったが,この場合も,接合できなかった.また,ECAP法では,昨年度,1パスで型が破壊し,型の形状を再検討することが必要であることが分かった.そのため,溝の角度を90°から115°に変更した型を作成し,再挑戦の準備をしている.マイクロマテリアルとバルク材の相違を検討するため方,工業用純鉄を用いて,平均結晶粒径22μmの細線を作成し,引張り試験および疲労鉢験を行った.その結果,直径0.80mmの細線は明確な降伏を示すのに対して,直径0.18mmの細線は降伏現象がないことが分かった.工業用純鉄の片振り応力下での疲労は,ラチェッティングによる変形の蓄積によって生じるため,降伏挙動の相違が,疲労試験結果にも影響を及ぼしていた.さらに,結晶粒径が小さくなった極限として,金属ガラスの疲労試験を実施した.その結果,金属ガラスは,冷却速度の違いによって板厚方向の強度が異なっており,そのため,試験条件によってき裂発生起点が異なり,種々の因子の影響を検討する場合には,力学因子だけでなく,強度分布も考慮する必要のあることが分かった.このことは,ECAP法で作成した微細結晶粒材でも,加工度が断面内で一定でないことにより,結晶粒径も分布するため,その強度評価をする場合にも強度分布に関する検討が重要であることを示唆している.
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