研究概要 |
前年度に引き続き,微細結晶粒バルク材の作成法として,繰り返し圧延法およびECAP法の検討を行った.ECAP法では,型の改良を重ねた結果,成功の見通しが立ったが,引張り試験,疲労試験を実施するまでには至らなかった.繰返し圧延法では,熱処理炉を改良することによって,精密な温度制御が可能となった.また,1回当たりの厚下率を低くし多数回の圧延,熱処理を繰り返すことにより,前年度よりも微細で,寸法のバラツキの少ない結晶粒材を得ることに成功した.すなわち,板厚0.1mm,平均結晶粒径1.Oμmの材料を安定して作成することが可能となった。その引張り試験および疲労試験を行った結果,引張り強さおよび疲労限度はそれぞれ590MPa,180MPaであった.結晶粒径20μm,1.2μmの材料の引張り強さは,それぞれ295MPa,540MPa,疲労限度は,それぞれ105MPa,140MPaであり,結晶粒の微細化によって引張強さ,疲労限度ともに大きく上昇した 結晶粒が微細化した極限として,金属ガラスの疲労試験も行った.この場合,軸力,面内曲げ,および面外曲げの疲労試験を行った結果,軸力疲労,面内曲げ疲労における疲労限度はほぼ一致しており,その値は面外曲げの疲労限度よりも大きく低下していた.また,ねじり疲労試験を行った結果,結晶金属とは大きく異なった結果が得られた.これらの現象は,材料の不均質性によるものであり,ECAP材の疲労強度を考えるうえでも重要であることが推察される
|