研究概要 |
ウサギ由来線維芽細胞様細胞株をタイプIコラーゲンで塗布した35mmディッシュに播種して炭酸ガスインキュベータで単層培養し,細胞が互いに接触し始める程度に増加したところでプラスチック製密閉容器に移し,アネロパック・ケンキ5%を用いて密閉容器内を低酸素状態とし,嫌気指示薬で確認した.温度は恒温機を利用して摂氏37度に保持した.細胞は2時間以上経過しても基質から剥がれなかった.また,室温でも同様に基質から剥がれなかった,この結果から,線維芽細胞は低酸素状態に対して強い細胞であることが示された.線維芽細胞は褥瘡発症後,治癒させたときに欠損部を埋める細胞であるから,このような厳しい環境に対して耐性が強いものと判断される.また,骨突起部の2次元ひずみ問題の有限要素解析を行った.モデルは骨,皮膚,脂肪組織からなる人体の一部と,皮膚が接触するマットレスあるいは床からなる.皮膚と脂肪には毛細血管の血流路を設けた.皮膚と脂肪は非圧縮等方で非線形弾性特性を記述する超弾性モデルを採用した.皮膚の伸展性,および,マットレスと床の選択によって,毛細血管の断面積の減少率と,毛細血管内のポアズイユ流れを仮定した血液の流動抵抗の減少率を調べた.その際,血液はニュートン流体とみなした.皮膚をマットレスあるいは床に押し付ける場合の変形解析の結果,皮膚よりも骨に近い脂肪に存在する血管のほうが断面積と流動抵抗の減少率が大きかった.また,皮膚が高齢化に伴って硬化することによって脂肪にある血管の断面積と流動抵抗の減少が増加した.
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