研究概要 |
超微細粒銅の引張強度は粗大粒に比べ著しい増加が認められる。しかし、高サイクル疲労強度はほとんど増加せず実用上の問題になっており、超微細粒銅を実用化するには耐疲労強度の向上と強度の評価法の開発が必要である.疲労強度向上のためには、疲労損傷形成挙動を明らかにする必要がある。形成機構を検討するため,繰返しによる表面損傷の形成過程を連続観察した。その結果、PSB状せん断帯の発生は粒界すべりに関係した1μm以下の微細割れからの母材の突出しによることを確認し、これに基づいた形成機構を提案した。これは、今後の耐疲労損傷材料の開発において考慮すべき結果である。微細化により疲労強度が増加しないのは組織の不安定性が大きいためで、組織を安定化するには回復熱処理が有効である。そこで、結晶粒径を変えずに組織を平衡状態に近付けた回復熱処理材の疲労試験を行った。疲労強度は10%程増加した。増加の理由を表面損傷の形成挙動の観点から明らかにした。ところで、材料を実機に使用するためには疲労寿命を予測することが重要である.通常の結晶粒径を有する材料の場合は、平滑材の疲労寿命の大部分が微小表面き裂の進展寿命で占められることが明らかにされている.本研究の結果、超微細粒銅でも微小表面き裂の進展寿命が全寿命の大部分を占めることが明らかになった。このことは、疲労寿命予測法の開発には微小き裂進展則の解明が必要なことを示唆する有益な結果である。
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