切削工具や金型などを対象に、優れた密着性が期待できるイオンビーム援用蒸着法により種々の超硬質cBN薄膜の作製を作製し、各種特性評価を基に最適成膜条件を検討することを目的とする。 基板には(100)単結晶Siウエハおよびガラスを用い、いずれも超音波洗浄して成膜する。成膜条件としては、(1)蒸発金属原子数Bと基板に照射するイオン数Nの比である輸送比B/Nを1〜5と変化させて成膜、(2)同一輸送比において、基板温度を常温(温度制御なし)から600℃まで変化させて成膜、および(3)同一輸送比および基板温度において、イオンビームの加速エネルギーを0.2〜20keVと変化させながら成膜の三種類であり、超硬質cBN薄膜を作製するための最適成膜条件を調べる。 種々の成膜パラメータで作製したBN薄膜について、電界放射型走査電子顕微鏡により薄膜表面および断面を高分解能に観察し、オージェ電子分光法、X線回折装置、X線光電子分光法およびフーリェ変換赤外分光法によりBN薄膜の化学組成、結合状態や結晶構造等を調べた結果、 1)作製したBN薄膜は、加速電圧の低下、輸送費の増加および基板温度の低下により結晶構造がhBN単相から(hBN+cBN)混合相へと変化する。 2)BN薄膜に生じる圧縮の内部応力は、(hBN+cBN)混合相が形成される成膜条件において最大になる。 3)BN薄膜に生じる内部応力は、高度と高い負の相関がある。 のような事柄が明らかになった。なお、薄膜と基板の界面におけるミキシング層と密着性の関係を考察するための、原子間力顕微鏡による薄膜成長過程の観察については次年度に行う予定である。
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