研究概要 |
高温下で被膜界面に酸化膜を形成したリング状試験片と円筒突き合わせ試料を用い,熱応力・高温せん断剥離強度試験を行うことで応力特異場における腐食疲労剥離限界条件を定量的に精密に求める得られた結果は以下のようである。 (1)加熱時間が長いほど、そして加熱温度が高いほど酸化(TGO)層の成長量は大きい。また、加熱時間72000sあたりから時間に対するTGO層の成長量は大幅に減少した。 (2)酸化前と酸化後のはく離経路は異なり、酸化前ではトップコートとボンドコートの界面ではく離が生じるが、酸化後ではトップコート内ではく離が生じた。 (3)トップコートのはく離強度は加熱時間144000sあたりまで上昇し、それをピークに減少した。本研究の酸化条件においては、はく離強度はTGO層厚さによらず、界面強度上昇およびトップコート自体の強度低下に影響を受けると考えられる。 (4)熱負荷によりトップコートにはく離が生じる.はく離はトップコート内で生じ,トップコートとボンドコートの界面の凸部を起点とすることを実験と応力解析から明らかにした. (5)遮熱被膜のせん断繰り返し試験において被膜疲労破壊はボンドコートに生じ,ボンドコート体にき裂が発生・進展することを実験的に確認した。 以上の結果から、高温下で運転されるガスタービンの翼の遮熱被膜の剥離に及ぼす酸化層などの影響や剥離の起点について重要な知見が得られた。今後、これら実験に対応する応力解析や高温でのせん断剥離実験および対応する応力解析を行い、遮熱被膜の高温剥離基準について提案出来る見込みを得た。
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