研究概要 |
本年は(1)900℃、1000℃および1100℃の3条件で加熱処理した試料の遮熱被膜のはく離エネルギーを室温下において円筒押し抜きせん断試験により実験的に調べた。また、(2)熱負荷によって基材が膨張することから、被膜にき裂が生じ、さらに界面でのはく離が発生する状況を観察するために高温単純引張りおよび繰り返し引張り試験を行うと共に有限要素法による実験に対応する状況における、試料界面に生じるせん断応力分布の解析を行い、考察を行った。 (1)はく離エネルギー、(2)き裂の発生とはく離進展、について、以下の知見が得られた。 (1)-a)加熱時間が長いほど,そして加熱温度が高いほど酸化物(TGO)層の成長量は大きい.また,加熱時間50000sあたりから加熱時間に対するTGO層の成長量は減少した. (1)-b)平均せん断応力は加熱時間が50000s過ぎまで上昇し,それをピークに減少していく傾向が見られる. (1)-c)はく離率は50000s過ぎをピークに上昇し,その後減少していく傾向があり,加熱温度が高いほど,はく離率が低い. (1)-d)本実験の条件では,付着強度はTGO層厚さよりも,相互拡散による界面強度上昇およびTCの強度低下に影響を受けると考えられる. (2)-a)き裂の発生は温度によって中間層BCから生じる場合(400℃以下)と表面層TCから生じる場合(700℃程度以上)がある.これの原因はBCの延性特性の変化が要因であろう。 (2)-b)はく離の発生はTCに生じた垂直き裂によってできた島状の部分から生じる. (2)-c)はく離は基材のクリープ伸び変形の増大によって発生すると考えられる.
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