研究概要 |
本研究では強化繊維に平織Eガラス繊維クロスを,母材にビニルエステル樹脂を構成基材とする平織GFRP積層板を試験片とした.試験環境は40,60,80℃の純水中ならびに大気中とした.はじめにGFRP試験片の静的引張試験を行い織物GFRPの機械的性質の環境・温度依存性を調査した.純水中における平織GFRPの機械的性質は大気中と比較して低く,試験温度の上昇によりさらに低下することが確認された。次に大気中ならびに純水中にて定荷重試験を行い,各試験条件におけるひずみ履歴ならびに破断時間を測定した.定荷重試験の試験条件は静的引張試験の結果にもとづき決定した.純水中の定荷重試験にて生じたひずみ値は大気中の同じ負荷応力の際の値と比較して高く,その増加速度も速いことが明らかとなった.純水中の破断時間は試験温度および負荷応力の増加に伴い短くなったが,大気中においては本研究の試験範囲内では破断しなかった. さらに定荷重試験の破断時間の予測を行った.繊維強化セラミックスのように繊維/母材界面の接着性が弱い複合材料の強度を計算する際には,破断繊維近傍に生じる応力集中を無視するglobal load sharing(GLS)という仮定が広く用いられている.本研究では浸漬によって界面接着性が低下するため,GLSの仮定に近づくことが考えられる.また,定荷重試験中には界面の接着性と同時にガラス繊維および母材樹脂の強度が低下することが考えられる.繊維および界面に関しては単繊維埋蔵型試験片を,母材樹脂に関しては樹脂単体の試験片を純水中に浸漬させた後に引張試験を行い,それぞれの機械的性質の低下挙動を定量化した.これら構成基材の機械的性質の低下をGLS理論に組み込み定荷重試験中のGFRPの残存強度を算出し,破断時間を予測した.そして定荷重試験の破断時間の試験結果と予測結果の比較を行い,本予測手法の妥当性を検証した.
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