研究概要 |
研究の目的において示した『第3の材料』として本研究が使用する微細フィブリルは,有用な力学的機能を有するが体積あたりの表面積(比表面積)が極めて大きいため,分散性に乏しく液中では容易に凝集化する.昨年度(平成20年度)においてはそれを解決すために,狭隙間を有するように配置した回転数差を有する3ロール式ミルを利用する基本手法を確立した.それをもとに本年度においては,研究実施計画に従い,その微細フィブリルを少量に複合材料の主強化繊維である天然繊維の周囲に適切に配置させ,強化繊維の持つ内力分担機構を変更させる手法を確立した.具体的には,使用した天然繊維である竹繊維と親和性の高い水分散系のポリ乳酸の中に微細フィブリルを分散させ,適切な温度条件のもとで加圧成形する事により,強化材として使用した竹繊維と同質のセルロース成分が竹繊維の破壊,すなわち脆性的なき裂発生を抑止するような安定性の高い材料系を実現した.また前述のミル加工の際の最適な加工条件についても検討し,薄い樹脂層の間にせん断応力の高い勾配を生じさせるために,微細フィブリル化セルロースの高分子材料の中での,基本的な分散性能(自己凝集サイズや速度)を把握した.その結果,微細フィブリル化セルロースを添加した際の分散性はギャップの狭間距離に依存し,ミルのせん断回転数の条件には依存しない事がわかった.具体的には,数μmの微細繊維を用いる本条件の場合には,狭間距離を5μmとする条件が適切である事がわかった.一方で分散加工を行わないと,数μmの微細繊維が数百μmのサイズにまで自己凝集する事がわかった.最後に異なる含有率を添加した際にも,この狭間条件が適切である事を示した.
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