研究概要 |
本年度は,圧電材料としてチタン酸バリウム(BaTiO_3)を選定し,骨再生用足場材料へのBaTiO_3薄膜コーティングの創製を行った.本研究では,生体移植されるスキャホールドを開発対象としているので,BaTiO_3薄膜の細胞毒性を評価する必要がある.そこで,ラットの大腿骨より採取した骨髄細胞(MSC)を用いて,細胞増殖性および骨芽細胞様細胞への分化性について評価を行った. 材料として,チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3),BaTiO_3薄膜コーティングを施したSrTiO_3および検定済みの陽性対照材料B(毒性有),陰性対照材料C(毒性無)を用意した.材料を培養液に浸漬させて細胞毒性試験に使用する抽出液を作製した.材料上に播種したMSCを24時間培養した後に,培養液を抽出液と交換し,1,2,4日目に細胞数を測定した.いずれの材料もRefBより毒性は低く,またSrTiO_3とBaTiO_3薄膜コーティングを施したSrTiO_3の相対細胞増殖率に有意差はなく,BaTiO_3薄膜コーティングを施すことで生体適合性を低下させることはないことが示唆された. また,材料上にMSCを播種して1週間培養した後,MSCから骨芽細胞への分化を促進させるためにデキサメサゾン,β-グリセロリン酸,アスコルビン酸を添加した培養液に交換し,更に1週間培養を行った.培養終了後,界面活性剤を用いて材料表面より回収した細胞および産生物のALP (Alkaline phosphatase)活性を測定した.BaTiO_3薄膜によってALP活性が低下することはなく,BaTiO_3薄膜を施すことでMSCから骨芽細胞様細胞への分化を抑制することがないことが示唆された. これらの結果より,既存の骨置換材やscaffoldにBaTiO_3薄膜コーティングを施し,生体内で安全に使用することが可能であることが示された.
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