研究概要 |
本年度は,圧電材料としてチタン酸バリウム(BaTiO_3)を用いた骨再生用足場材料の開発のために,創製したBaTiO_3薄膜の生体適合性の評価および圧電効果が細胞の分化に及ぼす影響の評価を行なった.7週令オスFisherラットの大腿骨より採取した骨髄細胞(MSC)を用いて,細胞増殖性および骨芽細胞様細胞への分化性について評価を行った. ・BaTiO_3がMSCの分化へ与える影響評価 BaTiO_3薄膜コーティングがMSCから骨芽細胞への分化に与える影響を評価した.材料は同じである.材料上にMSCを播種し1週間の培養後,分化培地を用いて更に1週間培養を行った.培養終了後,材料表面より回収した細胞および産生物のALP(Alkaline phosphatase)活性を測定した.BaTiO_3コーティングを施すことによって,ALP活性が低下する傾向がみられたが有意差は見られなかった.これより,BaTiO_3薄膜コーティングを施すことでMSCから骨芽細胞様細胞への分化を抑制することがないことが示唆された. ・BaTiO_3の圧電効果がMSCの分化へ与える影響評価 BaTiO_3の圧電効果の影響を検討するために,疲労試験機に取り付けひずみを負荷しながら材料表面上で骨髄細胞を培養できる培養器を開発した.圧縮荷重はBTO plate表面が3,6および9μC/cm^2に帯電するように設定した.材料のひずみによる骨髄細胞への影響が無いことはあらかじめ検討しておいた.DNA量,ALP活性およびカルシウム量は6および9μC/cm^2の表面電荷に帯電させたとき高い値を示し,圧電効果によりBTO plate表面に誘起された6および9μC/cm^2の表面電荷が骨髄細胞の増殖および骨芽細胞への分化を促進することが分かった.
|