平成22年度の具体的な実施内容は、以下の通りである。 (1)ガラス金属であるCu-Zr系アモルファス合金および従来型アモルファスであるNi-Zr系アモルファス合金の力学特性を調べ、その違いがどのようなメカニズムから生じるのかを調べることを試みた。ガラス金属であるCr-Zr系アモルファス合金および従来型アモルファスであるNi-Zr系アモルファス合金の力学特性を調べた。具体的には、無負荷の平衡状態における材料物性の評価を行った。 (2)アモルファス構造を母材とし、ナノ結晶構造を模擬して鉄結晶を複合化させた構造について、コンピュータ上でシミュレーションを実施した。これにより、結晶を分散させたコンポジットアモルファス材料の相安定性を調べることを目的として、分子動力学シミュレーションを実施した。結晶核のサイズをパラメータとして構造の安定性を評価した。これにより以下のことが分かった。(i)432個の原子から成るアモルファス構造で推定されたガラス転移温度(T_g=0.8×T_m=2240K)より低温の2000Kでの構造緩和計算では、全ての構造モデルにおいて結晶化が起こった。一方、500Kでの構造緩和計算では、結晶核の大きなもの(半径r=40A)は結晶化したが、結晶核の小さなもの(r=10A)では結晶核は消滅し、アモルファス構造となった。また、やや大きい中結晶核を含むものは結晶核と母材の構造が初期状態から大きく変化することなく、それぞれの状態を保った。(ii)結晶核の成長過程では、(1)多結晶構造の発生、(2)アモルファス構造中の結晶による相転移(3)結晶を含むアモルファス構造中の欠陥といった特徴的な現象がみられた。以上の現象は、結晶を含むアモルファ母材において結晶核が急激に成長したり、母材自体に結晶化が起こると、金属の強度が劣る原因となる要素が生まれる場合があることを示す。
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