電子デバイスのはんだ接合部は、電源のon/off等に伴い、接合部品(材質:銅合金、樹脂、はんだ等)間の熱膨張係数の差により繰返し熱応力を受ける。はんだ接合部の形状は、はんだ付けの際、素子からのリードおよび基板側のランド等の被接合物の形状の影響によりフィレットや切欠きを有する場合が多い。さらに、はんだは常温で著しくクリープを呈する材料である。したがって、動作中の電子デバイスのはんだ接合部は、応力集中部にクリープ疲労負荷(クリープおよび疲労に起因する損傷を同時に与える負荷)を受けており、はんだ接合部の品質保証のためには、応力集中部に関するクリープ疲労寿命評価法を開発することが必要である。しかし、これまで、応力集中を伴うはんだ接合部のクリープ疲労寿命評価法に関する実験的研究はあまり実施されていない。 今年度の研究では、前年度検討した応力集中を伴うSn-3.5Agはんだのクリープ疲労寿命評価の精度を向上させるため、クリープ疲労き裂伝ぱを考慮に入れた同材のクリープ疲労寿命評価法を開発した。具体的には最初に、有限要素解析により求めた環状切欠き試験片の切欠き底断面におけるミーゼス型相当ひずみ範囲を用いて、き裂発生繰返し数と破損繰返し数を整理した。このことにより、応力集中を伴うSn-3.5Agはんだのき裂発生繰返し数は、弾性応力集中係数に依存し、破損繰返し数は、ひずみ波形に依存することを明らかにした。さらに、弾性応力集中係数及びひずみ波形の依存性を研究代表者らの以前の研究結果より定量化し、応力集中を伴うSn-3.5Agはんだのき裂発生繰返し数、き裂伝ぱ繰返し数及び破損繰返し数の評価法を構築した。
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