研究概要 |
本研究では,一体型複合ヒンジ機構による弾性案内と,電磁力アクチュエータとしてボイスコイルモータ(VCM)を用いた位置決め機構を研究対象とし,最大1×1mm(X×Y)程度のストローク(ミリストローク)にわたって1nmの分解能と10nmの動的運動精度を持つ平面位置決め機構を実現する.また,弾性案内の構造系における動的最適化と制御系の最適化の統合化設計の方法についてシミュレーションと実験により系統的に検討し,弾性案内一電磁力駆動によるミリストローク超精密位置決め機構の構成法を提示することを目的としている. 本年度はまず,昨年度までに製作した位置決め機構のX-Y-θ各軸単独の駆動特性を,分解能0.6nmのレーザ測長システムを用いて評価した.その結果,階段状ステップ位置決め分解能は2nmを達成した,また余弦波状入力に対する追従偏差をCAS(累積振幅スペクトル)により評価したところ,偏差のRMSを1.0nm(X-Y)および3masec(θ)に抑えることができた.次に,MIMO入出力特性を評価するため,準静的ランプ応答実験および周波数応答実験を行った.その結果,各軸間には微小な静的干渉が存在することが明かとなった.そこで,各軸間の干渉を除去するために,制御対象の逆モデルからなる非干渉化要素を導入したX-Y-θの全軸同時制御系を構成した.その結果,直径1mmの円運動における真円度誤差10.5nm,半径誤差のRMS値2nm以下を達成し,ミリストロークにわたってナノメートルレベルの位置決め分解能と精度を持っ超精密位置決めシステムを実現することができた.さらに,本機構の設計からモデル化および制御系設計までのプロセスを整理し,弾性案内と電磁力駆動によるミリストローク超精密位置決め機構の統合的設計手法を提示するための基礎的知見を得ることができた.
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