研究概要 |
イオン性液体に分散させるナノカーボン粒子をエポキシ樹脂に添加し,そのトライボロジー特性に与える影響を検討した.ナノカーボン粒子としてカーボンオニオンと,その原料であるナノダイヤモンドおよびカーボンブラック,表面構造がカーボンオニオンと同様のフラーレンを使用した.大気中のトライボロジー特性をボールオンディスク式摩擦試験によって評価した結果,荷重が0.29Nと小さい場合ではいずれも摩擦係数0.2~0.3程度を示し,摩耗もごくわずかであった.一方で,荷重が4.8Nと大きい場合では無添加およびナノダイヤモンドを添加したエポキシ樹脂では摺動開始時に約0.1であった摩擦係数が摺動距離とともに増加して最終的に0.3程度になり,大きな摩耗も生じた.それに対し,カーボンオニオン,カーボンブラック,フラーレンをそれぞれ添加したエポキシ樹脂では摩耗がほとんど見られず,大気中での摩擦係数も摺動距離によらず0.1程度の低い値を維持することがわかった.一方,真空中では,カーボンオニオンを添加したもののみが0.1程度の低摩擦係数を長く維持することがわかった.これらの潤滑特性の変化は,エポキシ樹脂中のナノカーボン自身のトライボロジー特性がそのままエポキシ樹脂中でも現れるために生じると考えられる.また耐摩耗性の変化を考察するため,作製した樹脂のビッカース硬さを測定した結果,いずれも同様の値を示した.したがって,耐摩耗性の向上は硬さの増加によるものではなく,摩擦係数の減少が主な要因であると考えられる.
|