研究概要 |
構造解析対象の形状と物性の不確定性を有する初期設計段階での有限要素法(FEM)解析に関する新たな手法を提案した。具体的には、節点位置(座標)と要素物性(ヤング率)の不確定性をそれらの変動幅(集合)として与え、構造の応答出力(変位と応力)を変動幅(集合)として求めるために、今回は計算量の少なさと計算効率を重視して、Finchの集合演算理論を採用し、具体的解析対象構造をトラス構造とした場合の解析アルゴリズムの定式化を行った。そのアルゴリズムでは、変動幅とともに、その範囲内において設計者が規定する選好度([0,1]の間の数値で定義)を入力変数である節点位置と要素物性の範囲に与えて、出力性能である応力と変位の選好度付き範囲を求める定式化を実施した。トラス構造を選択したのは、FEMとしては初歩的であるが、これを用いて提案手法の正しさを示すためであった。このようなアルゴリズムを具体化するために、トラス構造の2次元弾性解析プログラムを、購入したパソコン上で開発して複数の例題について解析を実行し提案手法の正しさを示し、それらの結果を国際会議と国内研究講演会で発表した。 以上の提案、解析結果により、一般に形状や物性が確定的でない構造への有限要素法の適用が可能となり、本研究は有限要素法としての新たな展開として意義の大きい提案となっている。また、製品や構造のライフサイクル設計という観点での初期設計の重要性について鑑みると、本研究はライフサイクル全体を考慮する初期設計における構造解析の観点での支援手法となっていて、この点でも本研究の有用性が示された。
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