ベースブロック(材質:アクリル、長さ:120mm、幅:30mm、高さ:40mm)とスライダ(材質:アクリル、長さ:100mm、幅:5mm、高さ:30mm)で構成される線接触部に平面レーザを照射して、ラインスキャンカメラにより、可視化された接触部を高速度撮影する実験装置を設計・試作した。平面レーザの入射角を全反射角以上に設定して、真実接触部を通過する透過光画像を取得した。接触部に400Nの垂直荷重を加えた後、スライダに与えた接線荷重(接触部の長手方向)を漸増し、スティック相からスリップ相、スリップ相からスティック相に摩擦が相転移する際の接触部の様子を最大10万フレーム/秒で高速度撮影した。無潤滑条件下では、グローバルスリップに至るまでの前兆現象として、接線荷重を加えた側(トレーリングエッジ)から断続的な部分すべりが発生した。部分すべりの発生長(=伝播距離)は発生毎に増加して、伝播距離が接触長を超えるとき、グローバルスリップが発生した。一方、線接触部をポリアルファオレフィン(PAO)で潤滑すると、相転移の様子は一転した。潤滑下では、線接触部内に複数の破壊核が形成され、それらが線接触部の長手方向に成長・結合して、結合領域が接触部全体に達すると、グローバルスリップが発生することを見出した。無潤滑下の摩擦の相転移は、ばねで連結された直列ブロック(1次元モデル)のダイナミクスとしてモデリングできるが、同モデルは潤滑下の摩擦の相転移を説明できない。潤滑の有無の違いを統一的に説明するモデルは、2次元モデルとなる見込みである。
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