研究概要 |
立位における転倒挙動の測定実験を可能とするために,転倒時に人体を保持し,同時に,作用力,姿勢の測定が可能なパラレルワイヤ駆動機構を用いた測定装置を設計・製作した.同装置は立位状態であるヒトの胸部を緩やかにサポートしながら,任意方向に姿勢を変化させることができる.また,同装置を用いて転倒挙動を詳細に測定するため,ワイヤ張力の測定を可能とし,さらに,ヒトの重心位置,支持力を測定するフォースプレートを製作して足部支持面とした.フォースプレートは左右独立しており,各足が接地面に及ぼす垂直荷重の大きさ,水平荷重の大きさと方向が測定可能である. 製作した転倒挙動測定装置を用いて実際に実験を行った.実験では,被験者は直立姿勢をとり,装置の傾斜とともに,サポート部に体が寄りかからないよう,主として足首周りに体を傾斜させていく.自立で身体を支えきれなくなった場合に,胸部周りに取り付けられたサポート部が身体を安全に保持する.傾斜方向はパラレルワイヤ駆動機構を制御することで前後左右計8方向とした.また,実験時にはワイヤ張力およびフォースプレートによる重心位置の移動を測定した. まず,両足支持で実験を行った.その結果,実験が安全に行えるとともに,転倒時にワイヤ張力が急増し,また,重心位置にも急激な変化が表れ,転倒瞬間を特定するとともに,その時の傾斜角度,重心位置の測定が可能であることを確認した.また,重心位置が両足の支持面内であっても転倒が生ずることを明らかにした.つぎに,片足支持での転倒挙動の測定を行った.その結果,左右の足で転倒が生じにくさが異なること,両足支持と比べて,前後方向はほぼ同じであるが,左右方向への身体傾斜による転倒の生じやすさが異なることを明らかにした.さらに,開眼と閉眼で転倒のしやすさを比較したところ,本実験の条件では,両条件で大きな差が生じないことを確認した.
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