研究概要 |
昨年度,製作したパラレルワイヤ駆動機構を用いた立位転倒実験装置に関して,被験者の装着部を柔軟な材料に変更するとともに,高さ,幅などを容易に調整可能として,身体寸法にあわせ装着可能とした.また,転倒挙動測定時にワイヤに作用する張力を計測して,身体の寄りかかりを判別し,装置の動作開始および停止を自動的に行うことを可能とした. 同装置を用いて,複数の成人健常者を対象に転倒挙動の測定を行った.その結果,まず,両足支持静止立位状態では,転倒時の重心位置は常に足部支持基底面内の境界付近となり,力のつり合いがとれなくなる幾何学的限界で転倒が起こることを確認した.ただし,被験者によつては転倒時の重心位置に左右方向で明らかな非対称が生ずることがあった.次に,片足立位状態において転倒瞬間を測定したところ,やはり,転倒時の重心位置は足部支持面の境界付近となった.ただし,身体を傾斜させるときに生ずる重心移動は不安定となった.また,被験者ごとに右足支持と,左足支持での転倒瞬間位置を比較したところ,顕著な差が見られる場合があった.そこで,転倒が筋力の限界で生ずる可能性があると考え,被験者におもりを装着して片足立位状態での転倒瞬間を測定した.その結果,おもりを装着しない場合に比べて,転倒時の重心位置は足部支持面の境界付近より内部となった.すなわち,ある一定以上の負荷を与えた場合,筋力の限界によって転倒が生ずる.この原因を身体モデルなどで考察した結果,身体支持には足関節およびMP関節まわりに大きなモーメントを要し,この値が下腿の筋力の限界を超えると,幾何学的限界に到達する前に転倒が生ずると考察した.
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