1997年の京都議定書以来、国内外ではCO2排出量低減が大きな課題となっている。ここで自動車エンジンから取り出される仕事の25~40%は摩擦によって失われており、自動車エンジン摺動部品の低摩擦化・耐摩耗性改善はCO_2排出量低減に大きく貢献すると考えられる。また最近はバイオエタノールを自動車燃料として用いるケースの増加傾向が見られ、このことからアルコールに対する摺動特性の調査も必須になると予想される。研究代表者は従来よりアルコールあるいは添加物を含まない環境負荷の小さい油中で低摩擦・低摩耗を示すしゅう動材料の開発を行い、平成20年度までにFe_7Mo_6基合金等が非常に良いしゅう動特性を示すことを明らかにしている。平成21年度研究代表者は、前年度低摩擦・低摩耗が期待されるとしたFe-Si系について摩擦・摩耗特性の評価を行い、予想通りの結果の得られることを確認した。またFe_7Mo_6粉末のプラズマ溶射により得られるBCC型合金及びσ型合金被膜の摩擦摩耗特性評価も実施し、BCC型合金及びσ型合金被膜共にFe_7Mo_6基合金と同等の低摩擦・低摩耗を示すことを明らかにした。今後スパッタ、EB蒸着などによっても被膜を作製し、機械的性質、トライボロジー特性等の評価を行っていく予定である。
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