研究概要 |
内側壁面が回転する環状流路は遠心分離機,ジャーナル軸受,回転機械にみられ,工業的に重要である.この流路では,軸方向の貫流によるせん断不安定に加えて,回転によるせん断不安定,周方向流線曲率による遠心力不安定,凹曲面上での貫流方向流線曲率による遠心力不安定といった複数の不安定流れ要因が同時に作用する.さらに実際の流れは乱流であり,軸方向に流路面積が変化する場合が多い.本研究は,この複数の不安定流れ要因が同時に作用する乱流場の挙動をLES(Large Eddy Simulation)とDNS(Direct Numerical Simulation)による数値解析と粒子画像流速計による速度場計測によって明らかにすることを目的とする. 実験では,出口部半径200mmの現有凹型流路に加え,新たに凸型流路を作成した.貫流レイノルズ数Re=1000,内側壁回転数の無次元数(テイラー数)Ta=0〜4000と変化させて実験を行い,2時刻法での粒子画像流速計により時間平均速度,乱れ強度,レイノルズ応力を算出した.流路の大型化により,より空間的に詳細な速度場の計測が可能となり,流路形状による流れ場の違いが計測された. 一般曲線座標系での2次精度差分法を用いた数値解析では,実験流路と幾何学的に相似な凹型・凸型流路での計算をRe=1000(一定), Ta=0〜4000の条件で行った.周方向の計算領域は45度,90度の2通りである.計算結果が貫流出口部境界条件に敏感だったので,出口延長部を設けて計算を行った.本計算条件内ではSGS成分は小さく,LESとDNSの結果は良い一致を示した.また実験同様,流路形状により渦構造が変化する様子が観察された.瞬時渦構造解析では,局所主流方向変動速度成分からストリーク構造を抽出した.
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