本年度は、高レイノルズ数における検証を目指し、先ず、一様等方乱流および一様せん断乱流の高レイノルズ数DNSデータの作成を行った.一様等方乱流では、外力の低波数成分への注入により統計的に定常な状態を実現し、格子点数を最大1024^3、レイノルズ数R_λを256とした.ランダムな位相をもった外力とlinear forcingによる外力の2種類の外力注入法を比較した.せん断乱流では、体積力の印加により定常状態を維持し、格子点数を512x512x129、R_λを150とした.次に、このデータを用いたエネルギースペクトルの非平衡成分の分析を行い、一様等方乱流においてKolmogorovの-5/3乗スペクトルに加えて、約2オクターブに渡る-7/3乗成分を抽出し、この結果が外力の注入法に依存しない事を示した.せん断乱流においても-7/3乗成分が抽出され、-7/3乗スペクトルの存在が強固である事を明らかにした.次に、この非平衡スペクトルとエネルギーカスケードの相関を解析し、低レイノルズ数の場合と同様に、-7/3乗成分は散逸率が極小値から増加する時間帯においては低波数成分が正値を取るが、極大値から減少する時間帯で負値に転じて高波数成分に伝達されてカスケードが起き、この遷移過程で生成される多重モードspiral vortexが誘発するスペクトルと整合している事を示した.更に、-5/3乗則スペクトルを定常基本解とした摂動展開の高次項を導出して-9/3乗成分の存在を予測し、その抽出を試みた.そして、-9/3乗成分が実際に存在する事を示し、この成分が散逸率が極値を取る時間帯で出現し、-7/3乗成分の符号変換に重要な役割を果たす事を明らかにした.
|