本年度は、その存在が実証されたエネルギースペクトルの非平衡成分の、実験計測データおよび高レイノルズ数DNSデータにおける検証を行った.実験計測データとしては、混合層における時系列データの供与を受け、Taylor仮説に基づく空間データへの変換を行ってスペクトルを算出した.DNSでは、格子点数を2048^3、レイノルズ数R_λを400とした強制一様等方乱流のDNSデータの作成を行った.このため、複数node上で並列計算を行うコードを開発した.そして、両データにおいて、平衡成分のKolmogorovの-5/3乗則に加えて、広波数帯にわたる-7/3乗と-9/3乗スペクトルが抽出される事を示した.更に、昨年度指摘した-9/3乗成分における代数的な対数補正が付随する事を明らかにした.次に、一様せん断流のDNSデータを用いて、ストリークにより形成されるスパイラル渦のモードと非平衡スペクトルとの相関を解析した.ストリークによって循環流が形成される時間帯においては、-7/3乗スペクトルを生成するモードのスパイラル渦が形成されるのに対し、ストリークが消失する時間帯においては、-5/3乗スペクトルを生成するモードのスパイラル渦が多く形成され、これらの渦がクラスターを形成してエネルギーのカスケードが起きる事を示し、強制一様等方乱流においても同様な形成が起きる事を示した.次に、スパイラル渦形成に対する粘弾性効果を、一様等方乱流と円管内乱流において、高分子応力は非affine性を考慮した構成方程式により与えるDNSにより検証した.法線応力差の正確な算出法を新たに開発して高分子の分布領域を特定し、スパイラル渦形成の抑制と乱流抵抗低減機構を明らかにし、非平衡スペクトルに対する非affine粘弾性効果を示した.
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