研究概要 |
本年度は風洞装置を一部改良し,流れの2次元性を改善した。また,プローブ移動装置にも改良を加え,最高並進速度を3.0m/sまで上昇させた。実験では,単線型熱線プローブを用いたフライングワイヤ(FHW)法によって境界層内スパン方向への測定を行い,16点の熱線レイクプローブによる測定結果(壁からの高さ0.2~1.1δの範囲)と比較した。熱線レイクプローブから求めた乱流組織構造の空間スケールは,壁から遠ざかるに従って僅かに大きくなり,時間スケールは壁から離れるとともに小さくなった。時間スケールの減少は平均速度すなわち構造の移流速度の増加に対応しており,FHW法によるスパン方向組織構造測定の適用限界を両者の比較から考察した。続いて,2次元後方ステップ背後の流れについてFHW法によるスパン方向組織構造の測定を実施し,乱流境界層の壁近傍構造(y^+=15)との比較を行った。はく離直後に空間スケールは僅かに小さくなり,粘性長さスケールの400倍程度下流からは空間スケールが拡大し始めることが分かった。 さらに,FHW法を本年度は流れ方向測定にも適用し,順流/逆流の混在する流れ場における測定法の確立に努めた。2次元後方ステップについて,ステップ高さをはく離前境界層厚さの0.5~4倍まで変化させて測定を行い,再付着距離を整理した。また,スモークワイヤ法による可視化観察実験を実施し,高速度ビデオカメラ撮影と市販PIVコードを用いた速度解析を進めているところである。今後,斜め後方ステップに上記両手法を適用する。 数値シミュレーションについて,昨年度に引き続き,Linux+Scoreによる自作PCクラスタを用いたプログラム開発を進めている。計算領域への流入用乱流データ生成ルーチンの開発は完了し,乱流統計量の検証を行った。現在,流出境界の問題と,斜め後方ステップ計算時における側方境界の取り扱いについて,検討中である。
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