研究概要 |
本研究は,固体と液体の接触角が移動速度に依存する動的ぬれの問題を明らかにするとともに,微小液滴の運動制御法を構築することを目的としている.まず,毛細管流路を対象として,液柱の運動と先端に現れる接触角の速度依存性について実験的に検討を行った.供試液体としてエチレングリコールを用い,3種類の毛細管(アクリル製,内径0.6,0.9,1.4mm)内の液柱の挙動を計測する実験装置を作成した.電磁バルブにより毛細管上端を解放し,液柱高さおよび速度の時間変化を高速度ビデオカメラにより観測するとともに,瞬時の液面形状の画像から接触角の速度依存性について検討を行った.液柱の運動について,重力,粘性力,慣性力と表面張力の釣り合いを表すLucas-Washburnの方程式がよく知られている.しかしながら,その妥当性を実験的に精度よく検証した報告例はない.接触角が一定と仮定した場合,Lucas-Washburn方程式から求めた液柱高さの時間変化は,測定値と大きな差のあることが認められた.接触角の速度依存性について,Coxの整理式中の実験定数を適当に仮定し,運動方程式を数値的に解いた結果は,実験結果とよい一致を示した.また,その整理式は,実際に測定される動的接触角の値をよく近似することができた.本実験で用いた毛細管において,接触角の速度依存性を明らかにするとともに,比較的単純な液柱軌跡の測定値を数値解とフィッティングさせ,動的接触角を求める手法が可能であることを示した. 壁面に付着した微小液滴などの運動を考えるとき,液体の前端と後端に現れる接触角の差(接触角履歴)の存在により,作用する表面張力の差が現れ,運動に対する抵抗の要因となる.壁面に超音波振動を与えたとき,接触角の変化について検討を行った.超音波の付加により,接触角履歴が減少する傾向が認められ,液滴移動に対する抵抗が低減できることを示した.
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