研究概要 |
本研究は,固体と液体の接触角が,固気液3相の接触線の移動速度に依存する動的ぬれの問題を明らかにするとともに,微小液滴の運動制御法を構築することを目的としている.毛細管内の動的ぬれ挙動について,毛細管の材質や管径ならびに供試液体を様々に変化させ,液柱高さの時間変化ならびに動的接触角の測定を行った.毛細管解放端を負圧にすることで,液柱先端の接触線の速度を増加させ,動的接触角が150°程度まで増加する場合も測定対象とした.動的接触角の速度依存性ならびに液柱高さの時間変化の実験結果は,昨年度構築した理論モデルとよい一致を示した.接触角が90°以上の場合にも,本研究のモデルが適用できることを示した. 固体面上に置かれた液滴の移動制御方法について,前年度からさらに検討を進めた.本研究では,固体面に超音波振動を与えて接触角履歴を減少させ,液滴駆動の抵抗となる表面張力の合力を低減する.その上で液滴の一端にレーザー光を照射し,局所的にぬれ性を向上させることにより,照射端の方向に液滴を移動制御する手法を構築した.本年度は,レーザー光照射による接触角低減ならびに液滴駆動時の力学条件について,実験的に検討を行った.レーザーを一様に液滴に照射したときの液滴形状の画像をμmの精度で計測し,軸対称液滴形状を支配するラプラスの方程式の解との比較を行った.実際の画像と理論解が一致するように接触角および表面張力をフィッティングすることで,両者の値を同時計測することができる.レーザー強度および照射時間を変化させ,接触角と表面張力の関係を求めた.この結果を用い,液滴が駆動する瞬間での液滴周囲の表面張力の合力を求め,釣り合いの条件が満足されることを示した.レーザー照射による接触角の減少が顕著であるため,表面張力の水平方向成分が増加することで,液滴は照射端の方向に移動することを明らかにした.
|