研究概要 |
軸流圧縮機出口に衝撃波管を直結させた実験設備を用いて,圧縮機列が過渡的に失速状態へと突入する過程を詳細に検討することが本研究の目的である.本年度は計画の初年度として,実験装置の製作および試運転,衝撃波印加実験を行うと共に,動翼列を対象として数値解析コードの作成を行なった.三段軸流圧縮機の回転軸を二重中空として途中にスリットを設置して圧力タンクと接続する.圧縮機と圧力タンクを識別する薄膜を撃芯で破膜することで微小振幅の圧力波を後方から圧縮機列へと突入させる.その際,管路途中に設置されたオリフィス開口比を変化させ,圧縮機系のBパラメータ値を変更する.圧縮機の失速直前定常運転状態において圧縮波を印加すると,波面の通過によって一旦増加した圧力上昇は次第に低下し,動翼列は失速状態へと突入する.この失速状態は安定ではなく,圧縮機列はその後,非常に長周期で失速と非失速状態を繰り返す.このように,多段圧縮機において部分失速とサージングが共存する現象が実験的に確認された.この大変動周期は概ね圧縮機系のサージング周期と一致すると考えられるが,オリフィス開口比によって大きく変化するという結果を得た.系のBパラメータを変化させた追加実験,および失速・サージ共存系の線形モデルによる大まかな推測が必要となる.一方,数値解析研究ではまず第1段階として,圧縮機動翼列を対象とした三次元非定常解析コードの作成を行った.現段階ではまずRANSによる概略解析を目的とし,乱流モデルにはSAを用いた.これにより動翼列内の非定常流れを解析し,圧縮機の定常状態において実験結果と良い一致を示すことを確認した.今後は解析領域を静翼列にまで拡張すると共に,計算コードの高精度化を目指す.
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