現在上質紙に最も多く用いられているクラフトパルプを供試パルプ液として、光切断された面内について撮影された画像(観測画像)から光源むらを除去してパルプ液濃度を評価する解析アルゴリズムを開発した。本計測法では、流動中のパルプ繊維の空間濃度分布のみならず、その時間的変化も捉えることができる特徴を有している。 ついで、本濃度解析法をダクト内パルプ液流れの繊維濃度に適用し、光ファイバプローブから出射されたレーザービームを用いた点計測透過法と比較し、面計測法による本解析手法の有用性と高効率性を検証・確認した。また、ダクト内パルプ液流れ特性も併せて調査した。その結果、紙の原料となるパルプ液の流動特性については、諸家によるこれまでの研究では圧力損失と流量との関係から3つのパターン(栓流、混相流、乱流)に大別されるとされていたが、パルプ液中の繊維挙動には5つのパターンがあることを見出した。さらに、供試パルプ液濃度Csに対する濃度分布の標準偏差(濃度変動)Crmsの比Crms/Csの値を取り上げて、流量(流速)と濃度むらとの関係を示した。製紙業界ならびに学術的に定めることができていなかった紙の品質に影響を及ぼす濃度むらについて、評価手法を開発・提案したもので、その有用性を査証している。これらの成果は、当初掲げた平成20年度の目標をほぼ達成している。
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