研究概要 |
建材で用いる塗料や防腐剤,接着剤などから発生する揮発性の有機化合物(VOC)は,シックハウス症候群の原因物質と考えられており,このVOCの低減技術の確立は,安全で安心な住環境の維持という,身近な環境問題として極めて重要な課題である.VOCとしてはホルムアルデヒド,トルエン,キシレンなどの化学物質が代表的なものであるが,現在はこれらをサンプリングして濃度を測定し,その上限値を定めた規制が行われている.このようなVOCは,住環境以外でも,塗装や洗浄,組立といった製造工程からも排出されていることから,これらVOCの排出抑制技術の確立が急務の課題となっている.このようなVOCの抑制技術の確立には,サンプリングによる総量的な計測だけでなく,局所的なVOC発生状況の精密な把握と評価法の確立が必要不可欠であると考えられる.本研究ではこのような課題を踏まえ,レーザー誘起蛍光法を用いたVOCの可視化技術を確立することを目的としている.平成21年度は,当初の予定通りVOCにレーザー光を照射した際に見られる蛍光の分光分析を行った.この分光計測についてはこれまでの研究に用いてきたエキシマレーザーを利用した.分光分析の結果,塗料から発生するVOCの蛍光とキシレンやトルエンの蛍光のスペクトルがほぼ一致することが確認できた.平成21年度はさらにより小型のレーザシステムでVOCが検出できるようにするために,YAGレーザーを用いた検出システムの構築を行った.YAGレーザーの第3高調波である355nmの紫外光の発信には成功したものの,この波長では十分な蛍光が得られないことがわかった.そこで,VOCが吸収しやすい266nmの紫外光を得るために光学系を改良した.また,蛍光の検出感度を向上させるために,高感度のイメージインテンシファイアを導入し,紫外域が検出し易い光学系の構築を行った.
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