研究概要 |
平成22年度は,前年度までに製作した計滴システムを用いて実際にVOC蛍光の検出を行った.特に,噴霧塗装時のVOC発生に関する基礎的な研究として,空間内に懸垂された芳香族液体の液滴からのVOCの拡散状態を観察した.また,噴霧が壁面に付着後のVOCの発生に関する基礎的な研究として,壁面に付着した単一液滴からのVOCの拡散状況の可視化も実施した.また,拡散挙動を拡散理論と比較して,ある程度の一致が見られることを確認した.これらに加えて,芳香族液体の噴霧を形成し,そこからのVOCの発生状態の可視化も行った.これらについてはほぼ当初の計画通りに研究を進めることができた.VOC蛍光の分光分析については,分光光学系を構成し計測を試みたが,十分な蛍光強度が得られなかったことからデータを得ることができなかった.これについてはより高感度の分光カメラの導入が必要であることがわかった.また,計画にあげていた接着剤や実際の各種塗料からのVOC計測を行い,それらの可視化が可能であることを確認することができた.これらの成果をまとめて,本研究開発の当初の主目的である小型紫外レーザーシステムを使ったVOC可視化システムを完成することができた.特に,エキシマレーザーなどの大型高出力紫外レーザーを用いることなく,数100mJの小型Nd:YAGレーザーの第4高調波を用いることでも,トルエンやキシレン,さらには実際の塗料などからのVOC成分の拡散状態が可視化できることを示すことができた.
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