本研究は、環境汚染物質の一つである微粒子状物質の挙動に影響を与えている熱泳動現象を明らかにすることを目的とする。そのため、高温度勾配の環境下で高精度な実験データを蓄積し、燃焼場に適用しうるモデルを構築することを目指して、期間3年の研究計画を立てた。本年度はその初年度として、既存の微小重力実験装置の改良を行うこと、および、高温度勾配の条件下で基礎データの収集を進めることの2点を計画し、研究を実施した。 既存の実験装置の改良については、予定通り、温度制御に関する問題を解決することができた。温度を高精度に制御するための制御系を新たに設計し製作することにより、当初の目的通り、高温度勾配での実験を安定的に繰り返し行うための環境を構築することができた。 データの収集については、途中、実験精度の確保に非常に手間取ったものの、最終的には予定通り実施することができた。当初、実験データの再現性が低いことに悩まされたが、実験室内の湿度の影響が予想外に非常に強いことが判明したので、その影響を排除することにより、データの精度を確保することができた。また、画像処理ソフトウェアの導入によって、解析データ数を大きく増加させることができ、統計処理による精度向上を図ることができた。試料粒子としては、当初の計画にある粒径5μmのPMMA球形粒子のほか、アルミナ粒子・亜鉛粒子を用いて実験データを収集した。その結果、熱伝導率の高い粒子における熱泳動速度が、既存の予測式による予測値に比べて顕著に低いことが明らかとなった。得られた結果の一部は第46回燃焼シンポジウムで発表した。
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