研究概要 |
コールドチェーンの発達に伴って食品を安全かつ美味しく凍結保存する技術の確立が求められている.凍結保存は原理的には,低温化と活性水分の低減により生化学反応の抑制を図るものであるが,凍結の過程で細胞レベルのミクロ現象が生じ,これが各種の凍結損傷に繋がる.したがって,食品の品質を劣化させない効果的な凍結技術の開発が課題となる. 本研究では,超音波を付与することにより凍結過程における氷晶形成の能動的制御を追究する.すなわち,超音波の付与により,超音波キャビテーションによる衝撃波を発生させ,これを利用して,(1)細胞内過冷却の能動的解除,(2)細胞内外の氷結晶の破砕・微細化,(3)氷核生成数の増進を図り,高品質な凍結を実現する技術の開発を目的とする. 本年度は第1段階として,模擬食品として寒天ゲルを供試した凍結実験,および超音波音場に置かれた試料の冷却過程の数値シミュレーションモデルの構築を行った.主な成果は以下のように要約される.1.試験セル,冷却液循環系,超音波振動発生装置,熱電対を用いた温度測定系からなる実験装置が製作された.2.高出力で超音波照射した場合には過冷却の解除効果が,また,低出力で照射した場合には過冷却の促進効果が見られた.3.凍結開始時の過冷却度を一定とすると,高過冷却度の条件において超音波照射による氷晶の微細化が確認された.4.超音波の照射方式について検討した結果,試料を超音波ホーンに近接して設置し,比較的低出力で超音波照射する方式が,氷晶の微細化の点から最も良い性能が得られた.5.FDTD法を用いた音場解析と熱伝導解析を組み合わせた計算モデルが構築され,試料内の音波の伝播,温度分布,および過冷却域の形成など,氷晶形成に関わる情報を計算することが可能になった.
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