研究概要 |
生体組織レベルの凍結保存において低生存率である理由として,高細胞密度による細胞同士の接触機会増加が挙げられるが,一方で,保湿剤のピアルロン酸ナトリウム(HA)添加による細胞間の水和促進により細胞膜損傷を低減できる可能性がある.本研究では,組織を模した単層培養細胞を凍結保存し,解凍後の生存率と2次元生存分布を蛍光染色画像の解析により明らかにし, HAによる膜損傷の低減効果を評価することを目的とする.本年度は,配向制御された単層培養細胞を凍結・解凍し,蛍光画像により生存率測定を行い,更にHA添加による生存率改善効果について調べた.研磨紙で溝加工し滅菌された細胞培養用カバースリップ(Nunc, 24×24×0.2mm)表面上でヒト皮膚繊維芽細胞を5×10^5cells/cm^2で24h培養し配向試料とした.試料1枚に凍結保護液(10%ジメチルスルホキシド含有培養液)を加え,配向に対し方向を与えて冷却速度0.3℃/minで-185℃以下まで凍結させた.試料を解凍し,生細胞と死細胞をそれぞれCalcein-AMとDAPI(同仁化学)で蛍光二重染色し,蛍光倒立顕微鏡とデジタルCCDカメラを介し,画像処理・解析システムに蛍光画像と位相差画像を取り込み合成し,生死細胞数から生存率を算出した.また,同じ試料を用い,HA(濃度:0〜0.5wt%)を加えた凍結保護液における凍結(冷却速度:0.3,3℃/min)解凍後の生存率も調べた.その結果,方向を与えて凍結すると溶液効果による生存率の低下がみられた,そして,細胞の配向に対し垂直に凍結方向を与えて冷却することにより生存率が改善されることが示唆された.更に,適切な濃度のHA添加により生存率が改善されることが示唆された.
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