研究概要 |
以下の2つの核生成現象について計算を行った. (1)液滴核生成 メタノール分子についていくつかの温度・過飽和度下で核生成現象の分子動力学シミュレーションを行った.計算時間を考慮して,メタノール分子を4000分子とし,凝縮潜熱を取り去るためにアルゴンを非凝縮ガスとして4000分子用いた.核生速度は臨界核を超えるクラスターサイズの個数を数えることにより,その数の時間変化から算出した.この方法は,泰岡が既に発表している方法(Yasuoka and Matsumoto, J. Chem. Phys., 1998.)を用いた.その結果,いくつかの条件下で核生速度を計算することができた.古典核生成理論と分子動力学シミュレーションの結果を比較するために,平衡状態の表面張力,気相の密度,液相の密度について計算を行った.今後さらに気液平衡状態の結果を解析し,古典生成で予測されている条件について議論する. (2)気泡核生成 Lennard-Jones流体について系の大きさを変えて,核生成速度の計算方法について検討した.核生成の計算方法については2通りの方法が提案されているが,その妥当性は検証されていなかった.本研究では,小さな系を100個用意し,核生成の待ち時間から系が核生成していない確率を算出し,そこから核生成速度を計算する方法を用いた.また,比較的大きな系について,系内にできる気泡核の個数から定義に従って核生成速度を算出する方法も用いた.結果,どちらの方法も同様の計算結果を得ることができた.液滴核生成の場合と同様に,臨界核,核生成の自由エネルギーを求めるために,気液平衡の分子動力学シミュレーションを行った.
|